空が真っ赤に光っている。今日は隣町が核爆発らしい。由美子はいつもより厚めにファンデーションを塗ってそして真紅の空に映えるように薄水色の口紅をつけた。そして猛からの電話。「はい」
今日は犬広場で待ち合わせだ。犬広場は名のとおり犬だらけの広場で、その数は千を超える勢いだ。猛は先に来ていた。
「こんにちは」猛は少し気取る。そして筋肉を誇示する。
猛のことを説明すると、猛は肉体労働者だった。猛は自分の肉体を美しいと心底信じていて其の逞しい肉体は事実、恐れ多い。そしてまた優しい猛は、散歩の老人すべてに笑顔を振り撒く。「こんにちは」「こんにちは」。楽しい時間はあっという間に過ぎるものだ。
「お待ちどおさま」由美子は笑顔で叫び愛のしるしを大げさにあらわす。猛も笑顔で叫んだ。「とても犬は色々のイロ!」「とても犬は色々のイロ!」二人の愛情は燃え上がり、犬広場の色とりどりの犬たちはそれを優しい視線で見守る。赤、白、黄色、緑、青。
長い口付けのあと、由美子は受け売りの情報を猛に楽しそうに話す。
「でね、西B地区にできたドリームランド、すごい面白いらしいのよ。ケケに聞いたんだから。すべて最新型のアミューズメントシステム内蔵だって。これから行かない?」
猛はかなり話を聞いて興奮したが、あいにく手持ちが無い。それを由美子に打ち明けると空しい笑いが響いた「あははははは」「あははははは」
仕方なく二人はお決まりのデートコースを歩くのだが、猛は上の空で、ドリームランドのことばかり考えてしまう。
「来週は金持ってきてやる」