崖の上のポニョを見た

ポニョ

ネタバレしないよう感想を書きますが内容について知りたくない方はお気をつけて。

子供連れの多い映画館。満員状態で映画を見るのは久しぶり。

今回の主人公「宗介」は5歳。今までの宮崎作品の中でも圧倒的に低年齢だ。映画を見ているのも幼い子供たち。
勝手に「子供たちはどんな反応をするのだろうか?」などと心配しながら見ていたのだが物語が始まると、笑う笑う。台詞ではなくてポニョや宗介の動きにいちいち反応する。
5歳の子は5歳の子。主人公の行動があまりにも子供で(当たり前だが)最初物語のテンポをつかみにくいと思ったが、子供たちの笑い声と合わさるとちょうどよく物語が進行する。
映画館で見てよかったと思った。

動じない子供と不安な大人。この構図がはっきりと描かれていた。ストーリーテラーにあたるのはポニョの父で彼が一番不安がる大人だ。宗介とボニョの行動をひたすら不安がる。
しかし宗介とボニョは動じない。ショックは受けても悩みもしない。考えもしない。主人公目線だと何も起こらないし理由も要らない。でも大人目線だと何が起こっているか知りたくなるし先のことが不安になる。崖の上のポニョは普通のドラマの展開に必要な大人の視点をごっそり削ることによって特異な映画になっている。物語後半は子供(安定)と大人(危機)のずれが激しくなるためかなり面白くなる。何も問題はないのに「大丈夫?大丈夫?」と心配がる親たち。

この映画の説明をほったらかしていく展開は、物語途中の宗介の母の台詞で予兆される。「不思議なことが起こっていてわけがわからなくてもひとまずなんかしよう」こんな感じの台詞だ。そしてこれがこの映画からのメッセージだと思う。大人が勝手に心配して物事を複雑にする。それは気づかない子供はなんと幸せで楽しい毎日だろうか。

動じない子供と同じように動じない老人が描かれている。安定=矢野顕子(ポニョの妹)=ポニョ<宗介<老人<宗介の母=ポニョの母<ポニョの父=不安定。5才から老人までをあまりにわかりやすく書き分けている。

宗介の父は出てくるが物語にはニアミスするだけ。しかし映画の後日談として宗介家族でいろんなことを語り合うんだろうなというのがわかるエンディング。最高に幸せなエンディングだった。物語は始まったばかり。だってこれはたった1日に起こった話なんだもの。

本当にすごい映画みた!という気持ちでいっぱいです。また見たい!そして矢野顕子最高!